関税率は対等でもトランプ関税で世界はどう変わったか

章1：かつての関税はほぼ同じ

昔、世界の主要国の関税率は10〜15％くらいで、ほぼ均衡していました。アメリカも同じくらいです。関税だけを見ると、貿易は公平でした。

しかし、アメリカには大きな問題がありました。それは「貿易赤字」です。

貿易赤字とは、輸入が輸出より多いことです。関税率は似ていても、アメリカは海外製品を大量に買います。電子機器、衣料品、自動車、家具などです。

一方で、輸出は航空機や農産物、半導体などに限られます。つまり、輸入額が輸出額を上回り、赤字が生まれるのです。平均関税率は同じでも、輸入量が多すぎると赤字は避けられません。

そこでトランプ大統領は考えました。「自国産業を守るため、輸入品に高い関税をかけよう」と。これが「トランプ関税」です。

対象国は中国、インド、ブラジル、日本、EU、カナダなど広範囲です。品目によっては50％もの関税がかかります。日本の自動車や電子機器も例外ではありません。

こうして、これまで対等だった関税率は崩れました。アメリカだけが極端に高い関税をかける状態になったのです。

まず、アメリカの国内消費が巨大だからです。市場が大きく、海外製品なしでは需要を満たせません。

次に、製造業の海外移転です。衣料や電子機器、自動車部品は中国やメキシコ、東南アジアで作られます。国内生産だけでは輸出が追いつかず、輸入に頼る構造です。

さらに、関税は交渉手段としても使われます。EUや日本、カナダに対しても、譲歩を引き出すために関税を高く設定します。

トランプ関税は世界に大きな影響を与えました。輸入国は報復関税やWTOへの訴えで応じました。貿易摩擦が増え、サプライチェーンの再編も必要になりました。海外製品の価格が上がり、消費者負担も増えました。

こうして、世界の関税は対等だった時代から、アメリカ主導の不均衡な状態に変わったのです。

トランプ関税によって、関税だけでなく輸入量と経済構造の問題が明らかになりました。今後もアメリカの政策次第で、世界の貿易の形は変わり続けます。