東海三県の公立高校入試制度の比較――岐阜県の現状と進路選択における課題提起
東海地方の愛知、岐阜、三重の三県は地理的に隣接していますが、中学生が直面する「公立高校入試」の制度には、県ごとに独自の仕組みが構築されています。特に「公立高校の併願(滑り止め)」の有無において明確な違いが存在します。
1. 東海三県における公立入試制度の違い
| 県名 | 主な選抜形式 | 公立の受験機会 | 特徴(滑り止め) |
|---|---|---|---|
| 愛知県 | 複合選抜 | 最大2校 | 公立同士で併願が可能 |
| 岐阜県 | 第一次選抜 | 原則1校 | 私立を併願するのが鉄則 |
| 三重県 | 前期・後期選抜 | 2回チャンス | 時期を分けた再挑戦が可能 |
【愛知県:複合選抜制度】
公立高校がA・Bグループに分けられており、それぞれから1校ずつ、計2校を受験可能です。これにより「第1志望校」と「第2志望校」を組み合わせ、公立のみでセーフティネットを完結させることができます。
【岐阜県:一回受験】
原則として3月の第一次選抜一発勝負です。愛知のような公立複数受験はなく、合否はその一校で決定します。このため、1月の私立入試での合格確保が極めて重要となります。
2. 岐阜県が「一回受験」を採用する背景
岐阜県は「全県一学区制」を採用しており、どこからでも希望校を受験できる自由度が高い反面、入試事務の効率性や、私立高校との役割分担(公私の共存)を重視しています。3月上旬の1回で全員の進路を確定させるという管理上の合理性が背景にあります。
3. 大垣市周辺(西濃地区)の地理的環境と受験生の現状
大垣市内には普通科共学私立が「大垣日大」に限定されるなど、地元の選択肢が少ないという事実があります。そのため、西濃地区の受験生は岐阜市内の私立や、愛知県の私立まで視野を広げて滑り止めを確保する必要があります。
4. 進路選択における課題:大学進学への影響
この「一回受験」という制度には、教育環境としての課題も指摘されます。
① 安全志向による「ランク落とし」
公立不合格を避けるため、本来の学力よりも一段階下の高校へ志望を下げる行動が一般化しています。これは堅実な選択である一方、挑戦の機会を抑制しています。
② 学習環境(ピア・エフェクト)の変化
周囲の生徒の目標レベル(目指す大学の層)が下がると、本人の基準も自然と最適化されます。本来難関国立大を目指せた層が、環境に合わせて目標を控えめに設定してしまうリスクがあります。
5. むすびにかえて
どの制度が優れているかは一概に言えませんが、岐阜県の実情において、生徒が不本意な妥協をせず、能力を最大限に伸ばせる環境をいかに担保していくか。各地域の実情に即した、進路選択のセーフティネットのあり方が今、問われています。

