考えるのが苦手な人へ。加藤昌治氏の『考具』で頭をアイデア工場に変える方法
上司から「もっとよく考えろ」と言われたことはありませんか?あるいは、白い紙を前にして腕を組み、じっと目をつぶって「何かアイデアが降ってこないかなあ」と悩んだことはないでしょうか。実は、これは「考えている」のではありません。ただ時間が過ぎるのを待っているだけ、つまり「止まっている」状態なのです。
今回ご紹介するのは、加藤昌治(かとう まさはる)氏の著書『考具』です。著者は、考えることは特別な才能ではなく、適切な「道具」を使いこなす技術であると言い切ります。硬い木を素手で切るのは無理ですが、のこぎりがあれば誰でも切れるのと同じです。思考も適切な道具(=考具)を使えば、誰でも驚くようなアイデアを生み出すことができるのです。
この記事では、情報の波に飲み込まれず、自分の頭を「アイデア工場」に変えるための最強の武器について解説します。思い込みを捨て、知性を正しく動かすためのレッスンを始めましょう。
あなたの頭を刺激する3つの問い
記事を読む前に、アイデア出しのコツに関するクイズに挑戦してみてください。答えは最後にあります。
- クイズ1:脳を強制的に動かすスイッチとして、「今日は赤いものだけを探して歩く」という手法を何と呼ぶでしょうか?
- クイズ2:アイデア出しの初期段階において、最も優先すべきなのは「質」と「量」のどちらでしょうか?
- クイズ3:9つのマスを使って、中心のテーマから連想を広げていく道具を何と呼ぶでしょうか?
脳は「サボりたがる」ものだと知る
私たちの脳は優秀ですが、実はとても怠け者です。「ただ考えろ」と言われても、何をしていいか分からずスリープモードに入ってしまいます。脳を動かすには、外からの刺激、つまり「きっかけ」が必要です。これが考具の役割です。
例えば、ある会議で「新しい企画案を出してください」と言われても沈黙が続くことがあります。これは参加者が「きっかけ」を持たずに手ぶらで集まっているからです。これでは行政の会議のように、時間だけが過ぎて何も決まらない状況を生んでしまいます。大切なのは、脳に無理やりスイッチを入れる道具を持つことです。
その一つが「カラーバス」です。これは「今日は街の中の赤いものだけを探す」と決めるだけの道具です。すると、普段は見落としていたポストや看板、花の色が次々と目に飛び込んできます。脳に「赤を探せ」という命令スイッチを入れるだけで、情報の世界はガラリと変わるのです。
ネットの情報を鵜呑みにしない「ネタ帳」の作り方
アイデアとは、全く新しい何かが生まれることではありません。「既存の情報と情報の新しい組み合わせ」に過ぎません。つまり、材料となる情報がなければ料理が作れないのと同じです。しかし、今の時代、ネット上には嘘や偏った意見も溢れています。腐った食材を冷蔵庫に入れたらお腹を壊すように、質の悪い情報をそのまま信じるのは危険です。
ある仕事ができる人の失敗談を紹介しましょう。彼はあるプロジェクトの企画を立てる際、ネット上の「住民の声」とされるデータだけを信じて計画を進めました。しかし、いざ実行してみると、現場のニーズとは全くかけ離れたものでした。なぜなら、そのネットの情報は一部の偏った意見を誇張したものだったからです。大切なのは、自分の目、耳、鼻、口、肌をフル活用して「確かな情報」を集めることです。スマホの画面の外側にあるリアルな観察こそが、思考の強い土台になります。
最初は「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」でいい
多くの人が「最初から満点の答え」を出そうとして手が止まってしまいます。しかし、プロの世界で最初から一発正解を出す人はいません。まずは大量に案を出すことが重要です。ここで役立つのが「マインドマップ」や「マンダラート」です。
マンダラートは、9つのマスの中心にテーマを書き、周りの8マスに関連するアイデアを埋めていく道具です。1人で悩んでいても3つしか出ない案が、このシートを使えば強制的に8つ、さらに広げれば64個と増えていきます。圧倒的な量を出すことで、自分の思い込みを超えた新しいアイデアに出会うことができます。数は質を育てるための土壌なのです。
論理という名の骨組みで「企画」に変える
たくさん出したアイデアは、そのままではバラバラのパーツです。次に、それらを他人のものを見るような「冷めた目」で見つめ直し、組み立てる作業が必要です。自分のお気に入り案に固執するのは、思考の偏りを生む原因になります。
行政の計画が立派な言葉だけで動かないのは、具体的にどう動くかという「骨組み」が弱いからです。出したアイデアを「メリット」「デメリット」「新しさ」といった箱に分けて整理し、事実と理屈で固めることで、あなたの言葉は相手の心を動かす強い力を持つようになります。思いつきを「企画」に変えるのは、こうした地道な整理整頓なのです。
動かなければ「考えていない」のと同じ
どんな素晴らしいアイデアも、頭の中にあるだけでは世の中を1ミリも変えられません。考えたことを現実の行動に移す。これが知的生産の最後の、そして最も重要なステップです。今日から何をすべきか、いつまでに終わらせるかをカレンダーやリストに落とし込むのも、立派な「考具」です。
大きなプロジェクトを任されたとき、全体を見て圧倒されるのではなく、今日1時間でできる作業まで細かく分けるのが賢いやり方です。道具があなたをゴールまで導いてくれます。やる気が出るのを待つ必要はありません。道具を使えば、自然と体は動き出すのです。
クイズの答え合わせ
それでは、冒頭のクイズの答えを確認しましょう。
- 答え1:「カラーバス(Color Bath)」です。意識の色を決めることで情報を引き寄せます。
- 答え2:「量」です。まずは大量に出し切ることで、質の高い案が見つかる確率が上がります。
- 答え3:「マンダラート」です。3×3のマス目を使って思考を強制的に広げる道具です。
最後に、あなたに問いかけたいこと
「考具」を持つということは、周りのノイズや誰かが作った情報に振り回されず、自分の人生を自分の手で選ぶための「免許証」を手に入れることです。情報をバラバラにして確かめ、自分なりの価値を見つけ出す。このプロセスを他人に任せてはいけません。
【発展的問題】コメント欄で教えてください
「もしあなたが明日、仕事やプライベートで『これまで誰も思いつかなかったような解決策』が必要になったとしたら、まずどの考具を使って、どこを観察しに行きますか?」
ぜひ、あなたの考えや試してみたい道具をコメント欄で教えてください。道具を一つ手にするだけで、あなたの未来は今日から変わり始めます。


